研究概要 |
まず初めに、我々の用いた患者リンパ芽球様細胞株の特徴を詳細に解析した。その結果、末梢リンパ血中の成分比率とは異なり、目的のBリンパ球様細胞の割合が非常に少なく、10%を割っていることが明らかとなった。従って、患者リンパ芽球様細胞株そのままをクローン化したのでは、非常に効率の悪い結果を招く恐れがあったため、Bリンパ球に対する特異的抗体である抗CD20抗体を吸着させたマグネティックビーズを用いて粗精製を行いその吸着画分中の細胞について、それぞれクローン化を行った。各クローンからゲノムDNAおよび、蛋白質抽出液を調整した。蛋白質抽出液について、B細胞マーカーCD20でウエスタンブロットを行うと、精製前に比べて効率よくB細胞クローンが得られた。次に軽鎖ラムダ鎖のJ1,J2,J3,J7について、ゲノムの組み換えが起った時のみそれぞれを特異的にアンプリファイできるプライマーを設定し、それぞれのクローンのゲノムDNAをテンプレートに、PCRを行い、アガロースゲル電気泳動を行った。この時、各サンプルはJ1-3,7のいずれかのプライマーでのみ増幅され、バンドが検出されないものは他のリンパ球成分(あるいは一部は血球成分)、二個以上のプライマーで増幅されるものはコンタミネーションであることを想定している。スクリーニングの結果、まず、統合失調症ではB細胞の割合が正常人に比べ少ない可能性が示唆された。 次にJ1-3,7のそれぞれが組み換えに選択される割合を検討した結果、正常人では若干のばらつきはあるもののほぼ均等に選択されていたのに対して、統合失調症患者では、J1,2が正常人よりも少なくJ3,7が多いことが明らかとなった。これらの結果は、B細胞数の違いを換算しても同様であった。
|