研究概要 |
扁桃体は海馬体とともに,認知症や統合失調症といった多くの精神疾患に関係する領域である.近年,嗅覚能力の異常が,これら精神疾患と関連している事が報告されるようになってきた.これには,扁桃体や海馬体のネットワークが,嗅覚系からの直接的な神経支配を強く受けている事が深く関係していると考えられる.しかし,扁桃体ネットワークが嗅覚系によって,どのような制御を受け動作しているのかは,あまりよくわかっていない.本研究では,嗅覚系における扁桃体ネットワークの機能構造を明確にする事を目的とした.その為に,研究初年度は,モルモット単離脳標本を用いた生理実験を行うとともに,空間的に張り巡らされた神経ネットワークの動作と神経投射様式を同時に解析できる実験系を新たに構築する事を目指した. 単離脳標本を用いて膜電位イメージングを行った結果,10Hzの嗅索への繰り返し刺激には,扁桃体皮質を活性化させる性質がある事が判明した.解剖学的な知見を踏まえると,この刺激には,扁桃体深部の核の応答性を高める効果がある事が推測された.扁桃体皮質へは,梨状皮質を介した経路と嗅内皮質を介した経路の二種類がある事が,研究代表者らの先行研究によりわかっているが,繰り返し刺激は,これら双方の経路に影響を及ぼしていることも判明した.このような生理実験を遂行すると同時に,二波長マクロ蛍光観察が行える光学系システムの構築を試みた.次年度は新たに構築したシステムを使用して,研究を進展させる.
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