研究概要 |
本研究は、ヒトに類似性の高い霊長類の運動ニューロンを用いて作製したALS2タンパク質欠失細胞を用いてALS2タンパク質の機能を明らかにし、ALS2タンパク質機能喪失による神経細胞死や機能異常の分子背景を解明することを目的とする。 そのために本年度は、1.マーモセットES細胞の培養方法の確立、2.マーモセットES細胞の神経幹細胞及び神経細胞への分化誘導方法の確立、3.マーモセットALS2遺伝子のクローニング、4.マーモセットALS2遺伝子に対するノックダウンベクターの構築、を試みた。 理化学研究所バイオリソースセンターより入手したマーモセットES細胞を用い、先行研究[Sasaki et al., Stem Cells. 2005]に従って、マーモセットES細胞の培養を行った。また、それらES細胞を用いて、ヒトES細胞を用いた神経幹細胞誘導方法を参考に、神経幹細胞の誘導方法を確立した。神経幹細胞からの各種神経細胞への分化誘導方法についても現在検討中である。次に、ES細胞から得たmRNAを鋳型に、マーモセットALS2遺伝子のcDNAクローニングを行った。cDNAクローンの配列決定を行い、マーモセットALS2遺伝子のコーディング領域についてDNA配列を決定した結果、マーモセットALS2遺伝子は、ヒトALS2遺伝子と同じく1657アミノ酸残基をコードし、そのアミノ酸配列は、ヒトALS2タンパク質のアミノ酸配列と98%一致していることが明らかとなった。さらに、pSingle-tTet-shRNA vectorを基本骨格として用いて、マーモセットALS2遺伝子を特異的に発現抑制するノックダウンベクターを構築した。現在、このベクターを用いてマーモセットALS2遺伝子をテトラサイクリン依存的に発現抑制することの可能なES細胞株の樹立に着手している。
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