研究内容:22年度は、21年度に引き続き、家族性レビー小体型認知症(DLB)家系で発見された変異型βシヌクレイン(syn)(P123H)を過剰発現させたトランスジェニック(tg)マウスの表現型の追加検討と、βsyn(P123)tgマウスの病態モデルとしての有効性を確認するための予備検討として、既存薬による効果の有無を解析した。今回は、初期のDLBの一部に効果があるといわれているアセチルコリンエステラーゼ阻害剤であるアリセプトの投与によってβsyn(P123H)tgマウスでみられる認知機能障害が改善されるかどうか解析し、βsyn(P123H)tgマウスでの認知機能障害がアセチルコリン系の異常によって生じているのか、検討する。 結果:前年度までの検討から、βsyn(P123H)による神経変性作用はαsynの過剰発現によって増悪されることが分かっているが、マウス内在性αsynがこの作用にどうかかわるか、αsynKOマウスと交配させ解析したところ、内在性αsynがなくともβsyn(P123H)による神経変性作用が認められた。また、3か月齢のβsyn(P123H)tgマウスにアリセプトを10日間経口投与し、モリス水迷路で記憶力を解析したところ、アリセプト投与群とコントロール群とで有意な差はなく、今回の検討ではアリセプトによる記憶力改善効果は認められなかった。 意義、重要性:βsyn(P123H)はそれ単独で神経変性作用を持つが、αsynが過剰発現された病的な状況下においてはαsynの病的作用を増強すると考えられた。また、今回アリセプトの効果が認められなかったことから、本研究で作製したtgマウスで認められる認知機能低下はアセチルコリン系の低下に起因しないことが示唆された。しかし、発症の極初期からの投与であれば奏効する可能性も否定できないため、再度検討を行う予定である。
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