研究課題
23年度は、前年度に引き続き、家族性レビー小体型認知症(DLB)家系で発見された変異型βシヌクレイン(syn)P123Hを過剰発現させたトランスジェニック(tg)マウスを用い、モデルマウスでみられる病態のメカニズムの基礎的検討と薬剤の治療効果に対する解析を行った。病態メカニズムは、本年度は、野生型βsynが病的にはたらく要因があるかどうかを中心に解析した。HEK293にβsynを過剰発現させ、ストレスを加えてβsynの細胞内凝集が起こるかどうかを検討したところ、増殖のさかんな状態下では、種々のストレスにさらされても凝集は認められなかったが、増殖の低下した老化状態にある細胞では、αsynで認められるような細胞内凝集を観察した。したがって、通常の培養で与えられるストレスだけでなく、さらに別の因子も加わることでβsynも病的に関わる可能性があることが見出された。また、このことは、synタンパクが存在しても若齢期には疾患は発症しないが、老齢期においてsynの凝集が引き起こされ、発症に関わることをよく表す重要な結果であると考えられた。治療効果の検討に関しては、βsyn(P123H)tgマウスは認知機能低下と同時に顕著な轡様症状も引き起こすことを見出したため、欝様症状を指標に、薬剤の反応性を検討した。実際のDLBにおいても、欝症状は初期症状として認められる。したがって、セロトニン再取り込み阻害剤による反応を解析したところ、低濃度では顕著な効果は見られず、高濃度でようやく著効することが観察された。このマウスでは逆の結果であったが、このことは、βsyn(P123H)tgマウスではもともとセロトニンの再取り込みが低下しているなど、シナプス機能の低下を示唆する可能性がある。βsyn(P123H)が主にシナプス末端に蓄積することを考えると、その病態メカニズムを考えるうえでも重要な知見であると考えられた。
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