今年度は、新規神経栄養因子mesencephalic astrocyte-derived neurotrophic factor (MANF)の性状解析を目的として、各種変異型MANFを作製し、細胞内蓄積・分泌メカニズムの解析を行った。また、最近当研究室で同定した新規小胞体ストレス応答因子cysteine-rich with EGF-like domains 2 (CRELD2)の細胞内挙動との比較検討も行った。 1)MANFC末端について:GRP78をはじめとする多くの小胞体局在性タンパク質は、そのC末端にKDELまたは類似の配列を有している。そこでMANFのC末端配列を各生物種で比較すると、高度に保存されたアミノ酸配列[R(T/S)(D/E)L]を有していた。そこで、この4アミノ酸欠損またはC末端にMycなどのTagペプチドを付加したMANFコンストラクトを作製し、その挙動を解析した。その結果、MANFC末端構造を変えることにより細胞内への蓄積が低下する傾向が見られた。 2)MANFα-helix構造について:MANFは6つのα-helix構造を有しており、それらの部分的欠損MANFコンストラクトを作製し、細胞内外のMANF量について解析した。その結果、欠損させるα-helixによって細胞内への蓄積および細胞外への分泌に著しい差があることが明らかとなった。 3)GRP78のMANFの細胞内挙動への関わりについて:上記で作製した各種MANF分泌へ及ばすGRP78の影響を解析したところ、GRP78の高発現がMANFの細胞内蓄積を増加させることを見出した。この結果はCRELD2の挙動に及ぼすGRP78の影響とは異なるものであった(現在投稿中)。 MANFは分泌性の神経栄養因子として同定されたことから、その受容体が探索されている。しかし最近、細胞内での細胞保護作用も報告されたことから、その作用機序はより複雑なものであると考えられる。本研究により得られた知見は、小胞体内におけるMANFの何らかの役割を示唆するものであり、作製した変異型MANFを詳細に解析することにより更にその機能を解明できると考えられる(尚、上記1-3で得られた知見は現在学術誌への投稿準備中)。
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