研究概要 |
本年度,豊環境飼育法と行動解析法を初めて立ち上げ,実験を開始した.まず始めに母子分離を行ない,その効果を確かめたところ,先行研究同様に,強制水泳試験(forced swim test;FS)でうつ様行動である無動時間が増加することが確認できた.また,オープンフィールド試験(open field test;OF)で不安様行動である中心領域での滞在時間や総移動距離の減少は確認できなかったものの壁に寄りかかる行動(leaning against wall)が有意に増加することが明らかとなった.次に,母子分離によりストレス脆弱性を示す仔ラットを豊環境で2週間飼育したところ,FSで無動時間が減少し,改善効果があることが明らかとなった.また,豊環境による効果はOFにおける中心滞在時間を母子分離群のみならず,対照群でも低下させたことから,豊環境は母子分離の有無に関わらず不安を改善する効果があることが明らかとなった.また,寄りかかり行動においても,同様の効果であった.オスだけでなく,メスについても調べたところ,メスではFSの中心時間やOFの中心領域滞在時間に変化は確認できなかったが,寄りかかり行動においてはオス同様の結果が得られた.この寄りかかり行動が不安の指標になるのかは先行研究では不明なので,調べるため明るさを変化させて,OFを行なった.ラットにとって嫌いな明るい状況では不安減少の指標である中心領域滞在時間が減少し,寄りかかり行動が増加していたことから,寄りかかり行動が不安の指標になる可能性がある.今後,さらに詳細に確認する予定である.さらに,豊環境が幼少期のみでなく成熟後でも効果があることを示す結果も得られた.これらの結果は幼少期の養育環境による心への影響を調べる最適な方法を調べる上で意義があり,精神疾患の新規治療法開発を目指す上で重要である.
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