近年、神経変性疾患の1つである脊髄小脳失調症14型(SCA14)の原因がprotein kinase Cγ(γPKC)の遺伝子変異であることが明らかとなった。γPKCは神経細胞特異的なPKC分子種であり、大脳皮質・海馬・小脳など様々な部位の神経細胞に発現が見られるが、SCA14では変異γPKCにより小脳プルキンエ細胞が選択的に脱落し、他の部位の神経は影響を受けない。変異γPKCが小脳プルキンエ細胞特異的に神経変性を起こすメカニズムを解明するため、初代培養小脳プルキンエ細胞内で変異γPKCと強く結合するタンパク質の同定を試みた。HaloTagシステムを用いたpull down assayにより、変異γPKCと強く結合するタンパク質としてheat shock cognate protein 70 (Hsc70)を同定した。続いて、生細胞レベルで変異γPKCとHsc70の結合を確認するため、初代培養小脳プルキンエ細胞にγPKC-GFPとHsc70-HaloTagを共発現させ、2-color FRAP (Fluorescence recovery after photobleaching)とRICS (Raster image correlation spectrometry)を行うことにより、Hsc70-HaloTagの流動性が変異γPKC-GFPの共存で影響を受けるかを検討した。その結果、2-color FRAP、RICSいずれの解析においてもHsc70-HaloTagの流動性は変異γPKC-GFPの共発現により有意に低下することが明らかとなり、生細胞でも変異γPKCとHsc70が強く結合することが確認された。変異γPKCはHsc70と結合することにより、Hsc70の機能を障害し、小脳プルキンエ細胞の神経変性を引き起こすことが示唆された。
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