RARの抗アルツハイマー病効果とそのメカニズムを先行研究で認められたトランスサイレチン(TTR)の発現増大に注目し、老化促進マウスであるSAMP8マウスを用いて検討した。結果として、RARの活性化は記憶・学習機能に対して一定の改善効果を示すことが示されたが、タンパクレベルではRAR活性化によるTTRの発現増大は認められなかった。一方で、α-セクレターゼ活性や神経新生に関わるタンパク質であるAdam10がRAR活性化により有意に回復した。本研究で用いたSAMP8マウスでは老化によるアミロイドβの蓄積が認められなかったためにα-セクレターゼ活性による作用は不明であるが、神経新生に関連するとされるHes5の発現量がRAR活性化により増大したこと、Adam10発現量とHes5発現量が有意な相関を示したことから、本研究において認められたRAR活性化による老化に伴う記憶・学習機能の改善は、TTRではなくAdam10-Hes5系の発現の回復と関連することが示唆された。
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