従来の研究により、アストロサイト特異的に発現する小胞体ストレスセンサーOASISが、カイニン酸投与による神経障害から海馬神経細胞を保護する事を明らかにしていた。OASIS欠損マウスの海馬ではカイニン酸投与により上昇するbrain-derived neurotrophic factor (BDNF)のmRNAレベルが野生型に比べて低下していた。そこで、本研究ではOASISによるBDNF発現制御機構に関する解析を行い、以下に示す成果を得た。 1)初代培養アストロサイトに小胞体ストレスを付加するとBDNFのmRNAレベルが上昇するが、OASIS欠損マウスに由来する細胞では、野生型ほどの上昇が認められなかった。同様の結果はC6 gliomaをOASIS siRNAで処理した場合でも認められた。 2)BDNFのプロモーター領域をルシフェラーゼアッセイにより解析したところ、Exonlに含まれる翻訳開始点の上流496bpが小胞体ストレスによるBDNFの転写に必要なことを明らかにした。更に、との領域に存在するCRE-like配列にOASISが作用してBDNFの転写を誘導することを明らかにした。 3)アストロサイトの培養上清に産生されたBDNFを免疫沈降により濃縮するアッセイ系を開発した。このシステムを用いれば小胞体ストレス付加時におけるBDNFの産生を蛋白質レベルで解析することが可能となり、小胞体ストレスがBDNFの産生に及ぼす影響を詳細に解析できると期待している。
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