研究課題
神経系幹細胞に強く発現するMusashi1は、進化的に高度に保存されたRNA結合蛋白質である。このMusashi1結合配列を全21塩基中に2個有するlet-7miRNA(let-7α,let-7f)は、Musashi1の標的RNAと考えられ、実際に試験管内で分子間相互作用することが確かめられている。本年度は、以下に記す研究成果を得た。PAZドメインはmicroRNAの3'端と相互作用しているAgo2蛋白質機能発現の重要部位であるが、PAZドメインとMusashi1蛋白質を共存させるとPAZドメインの蛋白質が不安定となることが明らかとなった昨年度の研究知見を受け、この不安定性の増大はMG132の添加によって回避されることが明らかとなり、ユビキチンプロテアソームによる蛋白質分解が原因だと考えられた。10アミノ酸ずつ段階的に欠削したPAZドメイン変異体をHEK293T細胞内で発現させてMusashi1蛋白質と共存させたところ、不安定化が起こらなくなる欠失部位を同定した。この部位には、ユビキチン付化がなされるアミノ酸が存在し、そのアミノ酸を別のアミノ酸に置換することにより、Musashi1依存的な蛋白質分解(不安定化)が回避された。また、Ago2は幹細胞特異的に発現するE3-ligaseの一つであるLin-41によってユビキチン化がなされることが明らかとなっているが、Ago2とMusashi1も同一蛋白質複合体に存在する局面があることから、Ago2-Musashi1-Lin41三者の相互作用の可能性を示唆した。総じて、本研究で明らかとなったMusashi1によるPAZドメインの蛋白質分解促進は、Musashi1が配列特異的に結合するlet-7などのmicroRNAに対する選択性を有した機能減弱の原因となる新しい分子機構であると考えられる。
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