本研究では、新規統合失調症候補遺伝子産物であるCHRNA7タンパクの解析から統合失調症発症の分子メカニズムに迫るというアプローチで研究を進めている。具体的には、CHRNA7結合タンパクの同定を行い、CHRNA7の機能を明らかにすることによって、統合失調症発症の病態メカニズムの解明を目指す。 本年度はCHRNA7結合タンパクの同定を試みた。最初にCHRNA7の発現プラスミドやRNAiの作製と評価を行い、研究に必要な材料を確立した。神経系の培養細胞にCHRNA7を過剰発現させた後、抗CHRNA7抗体による免疫沈降法等を用いてCHRNA7を精製・濃縮し、既に報告されている統合失調症候補遺伝子産物やその関連分子の抗体を用いてウェスタンブロットを行い、その相互作用を調べた。様々な統合失調症候補遺伝子産物やその関連分子について調べたが、CHRNA7に結合するタンパクは見られなかった。 同様の方法で免疫沈降後、電気泳動で得られるバンドにはCHRNA7以外にCHRNA7結合タンパクが含まれている可能性がある。このためCHRNA7の発現した大量の培養細胞から免疫沈降法とその後の電気泳動と銀染色により得られたバンドを濃縮して回収した。現在ペプチドマスフィンガープリンティングの方法で、CHRNA7結合タンパクの同定を試みているところである。新たなCHRNA7結合タンパクが同定できれば、そのタンパクの解析を進めることにより、CHRNA7の新たな機能を明らかにできる可能性がある。
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