研究概要 |
本研究では、新規統合失調症候補遺伝子産物であるCHRNA7(Neuronal acetylcholone receptor subunit alpha-7)タンパクの解析から統合失調症発症の分子メカニズムに迫るというアプローチで研究を進めてきた。具体的には、CHRNA7結合タンパクの岡定を行い、CHRNA7の機能を明らかにすることによって、統合失調症とアルツハイマー病発症の病態メカニズムの解明を目指してきた。 本年度はCHRNA7結合タンパクとしてかねてからCHRNA7のリガンドとして知られているアミロイドβタンパクに着目してタンパク間の結合やそれによるタンパク質修飾の変化の検出を試みた。具体的にはCHRNA7とアミロイドβタンパクとの相互作用を分子生物学、細胞生物学、物理化学的アプローチにより調べた。 我々の得た結果は、アルツハイマー病脳に蓄積するアミロイドβタンパクが、リガンドとしてCHRNA7に結合するという報告(Wang et al. J. Biol. Chem. 275, 5626-5632)を支持するものであり、さらに各種のアミロイドβタンパクにより、CHRNA7との結合能が異なることを見出した。この結果はCHRNA7がアルツハイマー病における老人斑形成の足場となっていて、アミロイドβタンパクの凝集が起こっていくという可能性を示唆している。今後も本研究を継続し、アルツハイマー病と精神疾患の病態メカニズムの関係についても調べていく予定である。
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