研究課題
Megalencephalic+leukoencephalopathy with subcortical cysts (MLC)という小児神経疾患は、機能が全く分かっていないMlc1遺伝子の変異によって発症する。Mlc1遺伝子はアストロサイトだけに発現するので、異常はアストロサイトに端を発するが、最終的にはオリゴデンドロサイトの構造異常、すなわちミエリンの異常として表現される。そのためMLCは、アストロサイトがどのようにして脳白質の恒常性を維持するのか、その答えを知るための最適なモデル疾患である。Mlc1遺伝子発現量と表現型にどのような関係があるか検討した。単純Mlc1遺伝子ノックアウト、および時期特異的Mlc1遺伝子ノックアウト(生後21日からノックアウト)では白質にいかなる変化も見いだすことは出来なかった。一方で、成体Mlc1過剰発現マウスでは脳梁に空包が出現し、組織そのものが脆弱になる表現型を見いだした。髄鞘の形成は生後21前後で完成するため、生直後から5日間隔で脳を回収し、どの時点から脳梁の組織脆弱性が始まるか検討した。生後5日では正常と区別がつかなかったが、生後10日で組織脆弱性が見いだされた。特に脳皮質が折りたたまれる部分の上衣細胞の損傷が激しいことから、Mlc1過剰発現によって上衣細胞の機能喪失が生じ、上衣細胞に接する白質の組織脆弱性に至ることが予想された。Mlc1蛋白質が脳室と脳実質のバリア形成に重要であること、その破綻が白質組織脆弱性の原因になることが示唆された。
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実験医学 28(5)
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Biol Psychiatry (in press)