扁桃体は、恐怖など情動の中枢であり、扁桃体でのGABAを介した神経伝逹は、情動の発現と記憶、さらに不安障害など精神疾患の病因との強い関連性が考えられている。しかし、グルタミン酸作動性ニューロンと較すると、GABA作動性ニューロンの形態、空間配置、ミナプス結合様式、電気生理学的特性ははるかに多様であり、解析ツールの不足からその詳細な機能は不明な点が多い。本研究では、1.GABA作動性ニューロンを黄色蛍光タンパク質分子Venusで標識したVGAT-Venusトランスジェニックマウス(VGAT:小胞型GABAトランスポーター)な用いて、扁桃体GABA作動性ニューロンの組織学、形態学、分子生物学および生理学的特性を明らかにし、2.扁桃体への興奮性シナプス伝逹および可塑性を制御する局所回路におはるGABA作動性ニューロンの役割を解明することで、「扁桃体GABA作動性ニューロンの研究基盤を形成する」ことを目標とする。本年度は、扁桃体GABA作動性ニューロンのサブタイプの分類を行うために、VGAT-Venusマウスを利用して組織学的解析を行った。まず、VGAT-Venusマウスを灌流固定後、凍結切片を作製し、GABA作動性ニューロンの代表的な化学マーカーであるカルシウム結合タンパク質(パルブアルブミン(PV)、カルレチニン(CR)、カルビンジン(CBD))の分布を解析するため、マウスPV抗体、マウスCR抗体、マウスCB抗体、Alexa594標識抗マウス抗体を用い免疫梁色することにより、扁桃体の各亜核におけるGABA作動性ニューロンの分布を観察した。その結果、PV、VR、CB陽牲ニューロンは、扁桃体外側核に観察されたが、介在核には観察されなかった。以上の結果から、異なる特性をもつGABA作動性ニューロンが扁桃体の各亜核に局在し、扁桃体による情動磯能の独自の調節を行っていることが示唆された。
|