研究概要 |
1. 三叉神経運動核咬筋領域と顔面神経核におけるリークK^+チャネル(TASK1及びTASK3)の発現分布を、リアルタイムPCR法用いて検討した。その結果,大型運動ニューロン群では、主としてTASK1/3へテロダイメリックチャネルが発現し、小型運動ニューロン群では、主としてTASK1/1ホモダイメリックチャネルが発現している可能性が明らかになった。このことから、大型運動ニューロン群では、リークK^+電流がコンダクタンスの大きいTASK1/3へテロダイメリックチャネルにより媒介されるため、比較的小さい入力抵抗を示し、小型運動ニューロン群では、リークK^+電流がコンダクタンスの小さいTASK1/1ホモダイメリックチャネルにより媒介されるため、比較的大きい入力抵抗を示すと考えられた。2. 神経損傷後に一酸化窒素(NO)の産生増加が起こることが想定されるため、三叉神経運動核ニューロンからホールセル電位固定記録を行い、cGMPアナログである8-Br-cGMP投与に対する電流応答を観察した。大型運動ニューロン群では、8-Br-cGMP投与によりリークK^+電流が減少し入力抵抗の増加が認められた。一方、小型運動ニューロン群では、リークK^+電流が増加し入力抵抗の減少が認められた。これらの結果から、神経損傷後、NO-cGMP-PKG系が活性化されることにより運動ニューロンに発現するTASKチャネルが制御を受け、運動ニューロンの入力抵抗が変化するものと考えられる。したがって、神経損傷後ではこのようなメカニズムにより、運動ニューロンの活動様式が修飾され、神経麻痺が生じる可能性が示唆された。
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