(1)リアルタイムPCR法を用いて三叉・顔面神経運動ニューロンにおけるTASK1/3チャネルの分布を検討した結果、大型運動ニューロン群では、主としてTASK1/3ヘテロダイメリックチャネルが発現し、小型運動ニューロン群では、主としてTASK1/1ホモダイメリックチャネルが発現していた。また、免疫組織化学染色を用いてTASK1/3チャネルの分布を検討した結果、小型運動ニューロンの細胞体においてTASK1チャネルが発現し、大型運動ニューロンの遠位樹状突起においてTASK3チャネルが発現していた。三叉神経運動ニューロンにおいて入力抵抗を計測したところ、大型運動ニューロン群(25μm<)では、小型運動ニューロン群(15-20μm)と比較して有意に小さな値を示した。従って、大型運動ニューロン群では、リークK^+電流がコンダクタンスの大きいTASK1/3ヘテロダイメリックチャネルにより媒介されるため、比較的小さい入力抵抗を示し、小型運動ニューロン群では、リークK^+電流がコンダクタンスの小さいTASK1/1ホモダイメリックチャネルにより媒介されるため、比較的大きい入力抵抗を示すことが明らかとなった。(2)末梢神経損傷後、損傷を受けたニューロンでは一酸化窒素(NO)の産生増加が生じることが知られている。そのため、産生増加したNOによりニューロンの膜興奮性が変化する可能性が示唆される。そこで、ニューロンに発現している漏洩K^+電流が、NO-cGMP-PKG系の活性化によりどのように制御されるかについて検討した。三叉神経運動核ニューロンから記録を行い、cGMPアナログである8-Br-cGMP投与に対する電流応答を観察したところ、大型運動ニューロン群では、漏洩K^+電流の減少が認められ、小型運動ニューロン群では、漏洩K^+電流の増加が認められた。このように、NO-cGMP-PKG経路の活性化により、運動ニューロンに発現する漏洩K^+チャネルが制御を受け、ニューロンの膜興奮性が変化することが明らかとなった。NOによるニューロンの活動様式の変化が、神経麻痺発症のメカニズムである可能性が示唆された。
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