大脳皮質の局所神経結合様式を詳細に記述することは、大脳皮質で情報処理が行われる仕組みを理解するうえで不可欠である。しかしながら、現在これを調べる主要な手法である相互相関解析は、共通入力成分や同期入力成分のため十分な解像度が得られないという問題がある。この問題を解決するために今回われわれは単一細胞に電気刺激を施し、それにより生じた細胞活動が、周囲の細胞のスパイク活動にどのような影響が生じたかを測定する手法を確立し、これをネコ大脳皮質第一次視覚野に適用する研究を行った。過去1年間の研究で、数nAの傍細胞刺激で単一細胞を長時間電気刺激しながらその細胞活動を記録し、同時に周囲の多数の細胞の活動を多点アレイ記録電極で記録することに成功している。興奮性細胞を電気刺激して誘発したスパイクが、周囲の細胞のスパイク発火を生じさせる確率を見積もったところ、平均で2%程度であった。また、この確率は刺激細胞と、周囲細胞の受容野特性が似ているほど高いことがわかった。さらに抑制性細胞を電気刺激して誘発したスパイクが周囲の細胞のスパイク発火をキャンセル確率も同程度であったが、この確率の大きさは、電気刺激した抑制性細胞と周囲細胞の受容野特性の類似性には依存していなかった。今後さらにデータを増やして入いく必要があるものの、この測定を重ねていくことで、同期や共通入力成分を除去した純粋な神経結合様式が同定できるものと考えている。以上の研究成果は平成22年度日本神経科学学会および北米神経科学学会で発表している。
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