研究課題
本研究の目的は、把握運動時の筋活動制御に脊髄介在ニューロンおよび大脳皮質一次運動野ニューロンがどのように貢献しているのかを電気生理学的に比較・検討することであった。把握運動中のニホンザルから脊髄介在ニューロンおよび一次運動野ニューロンの活動を記録したところ、199個の脊髄介在ニューロンおよび166個の一次運動野ニューロンが記録された。これらのニューロン活動をトリガーとして筋活動を加算平均したところ、21個の脊髄介在ニューロンおよび12個の一次運動野ニューロンにおいて上肢筋活動へのスパイク後促進・抑制効果が認められた。これらのニューロンがシナプス後効果をもつ筋群を比較したところ、一次運動野ニューロンが平均1.2±0.4個の筋へ効果を持っているのに対して、脊髄介在ニューロンは平均2.3土1.4個の筋肉とより多くの筋群に対して発散した効果をもっていることが明らかになった。さらに筋活動の因子分解法によって、脊髄介在ニューロンから発散した効果を受ける筋群は把握運動中に協働的に働いていることが示唆された。この結果から、把握運動時の筋活動生成において、脊髄介在ニューロンを介した神経経路は複数の手指筋群を協調的に活動させる効果を持っており、一方、大脳皮質一次運動野からより直接的に運動ニューロンに投射する経路はより少数の筋肉の活動を個別に調節していることが示唆された。これらの成果は、基礎的な運動制御神経基盤への新たな知見を加えるとともに、今後脊髄損傷時における運動障害のより詳細な評価法確立といった応用可能性を持ったものである。
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The Journal of Neusoscience
巻: 30(50) ページ: 17041-17050
http://www.ncnp.go.jp/pdf/news_101216.pdf