マカクザル下側頭葉に多電極アレイを埋めこみ、顔以外の物体にはほとんど応答せず、顔には強く応答するいわゆる"顔エリア"の一つより記録を行った。この領野は、顔のある部分により選択的に応答したが、顔の部分のみで視覚提示した場合よりも、顔の全体画像として提示した時により強く応答した。また、個体や見る角度によってカラム活動パターンは微妙に異なり、これらの応答パターンは個体情報や角度情報で優位にカテゴリー化することが可能であった(2009年日本神経科学会にて発表)。このような領域で当課題の計画を実施することで、動物が画像を視覚的に同一カテゴリーと見なすメカニズムに迫れると期待できる。 マカクザルにてウイルスベクターの導入実験を行い、ある種のアデノ随伴ウイルスをマカクザルの神経細胞に特異的に発現することに成功した(未発表)。このウイルスベクターを用いて、光を感受して細胞膜電位を選択的に変化させるチャネルロドプシンを導入することで、光刺激によって狙った部分の神経興奮あるいは抑制を起こすことが可能となる。電気的な刺激では、神経興奮と神経抑制がある程度混在しだ汚い"刺激になることが知られているが、当課題においてカラム選択的な刺激を行う部分をチャネルロドプシンを使う光刺激の系に置き換えることで、よりクリーンな実験結果を得られると期待できる。 申請者は今年度より新しい研究室に移動したが、マカクザルが視覚行動課題を行う実験系と多電極記録を行う実験系を組み立て、2頭の動物に注視課題を行わせている。うち1頭の動物では下側頭葉より多電極記録を行い、視覚刺激に対する視覚皮質の応答パターンを記録した。
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