研究概要 |
粥状動脈硬化巣の進展とそれに続くプラーク破綻は、心筋梗塞などの極めて重篤な疾患の引き金となるが、このプラーク破綻のメカニズムは不明な部分が多い。このプラークの進展や破綻のメカニズムに関しては、病変部において発現が見られる種々のプロテアーゼの関与が注目されている。本研究では、プラークの脆弱化や破綻を誘導する動物モデルを用い、プラーク破綻のメカニズムにおけるプロテアーゼ(特にカテプシン)の関与を検討することを目的とした。 【結果】プラーク脆弱化・破綻モデルにおいて、ヒトと同様に、プラークにおけるカテプシン(Cat)SやCatKの発現が、特にプラークに浸潤したマクロファージにおいて強く認められた。さらにCatSの発現はアンギオテンシン1型受容体(AT1)の発現細胞と一致し、AT1の阻害剤であるオルメサルタン(OLM)の投与により、CatSの発現抑制及びプラーク脆弱化の抑制が認められた。一方、培養マクロファージに対するアンギオテンシンII(AII)の投与はCatSの発現を誘導し、これはOLMの投与により抑制された。また、このAII投与により、マクロファージのコラーゲン・エラスチン分解能が促進されたが、これはOLMやCat阻害剤の投与により抑えられた。以上の結果から、プラーク脆弱化・破綻には、マクロファージにおいて発現されるCatSの関与が示唆され、さらにこのマクロファージにおけるCatSの発現にはアンギオテンシン系の関与が考えられた。なお、研究代表者は、本成果を主にAtherosclerosis誌(2010)において発表した。 さらに、研究代表者はimaging mass spectrometry解析により動脈硬化巣に特異的な分子を報告し(Atherosclerosis, 2011)、また動脈硬化巣に対する新規の解析手法についても報告した(生物学技術研究会報告,2011)。
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