研究概要 |
自然免疫機構は、パターン認識受容体を介して病原性微生物の構成成分を認識し感染防御応答を誘導することによって、宿主を病原性微生物から守っている。病原性微生物の核酸はパターン認識受容体を介した自然免疫応答を強く誘導し、また死細胞のdsDNAも自然免疫機構を介して炎症を誘導することが知られている。本年度は、dsDNAの刺激によってダイナミックな膜動態の変化が誘導されること、その膜動態がオートファジー関連因子であるAtg9aによって制御されていることを報告した。 DsDNAによる自然免疫の活性化には膜貫通蛋白質であるSTINGが重要な役割を果たしていることが知られているが、本年度の研究ではdsDNA刺激によってSTINGがEndoplasmic reticulumからGolgi apparatusを介して細胞質内の未知構造体に移行し、下流のシグナル伝達因子であるTBK1を活性化することを明らかにした。DsDNAで刺激した細胞において、STINGはオートファジーによって分解を受けるp62/SQSTM1と共局在を示したため、様々なオートファジー関連因子とSTINGの局在を調べた結果、STINGはGolgi apparatusにおいてAtg9aと共局在し、さらに細胞質においてLC3と共局在することを見出した。また、オートファジーが誘導される際に隔離膜に移行することが知られているULK1,Atg5,Atg14Lの局在はdsDNA刺激によって変化しないことから、STINGが局在する細胞内構造体はオートファゴソームではないことも明らかとなった。そこで、dsDNAによる自然免疫活性化におけるAtg9aの役割を新たに作製したAtg9a遺伝子改変マウスを用いて解析し、Atg9aを欠損した胎生繊維芽細胞ではdsDNA刺激によるSTING・TBK1両陽性の構造体の形成が促進していることを見出した。この結果に一致して、Atg9aを欠損した繊維芽細胞はdsDNA刺激に応じて過剰のインターフェロン・サイトカインを産生することも明らかとなった。また、Atg7を欠損した繊維芽細胞はdsDNA刺激に正常に応答することから、Atg9aはオートファジー関連因子としてではなく、そのユニークな機能を介して自然免疫応答を制御していると考えられた。
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