研究概要 |
本年度は、核酸を認識するパターン認識受容体Toll-like receptor(TLR)7/9のシグナル伝達経路の解析結果を報告し、また、現在までに報告されているオートファジーと炎症との関係を取りまとめた総説を発表した。 自然免疫機構は、パターン認識受容体を介して核酸などの病原体構成成分を認識し、宿主を病原性微生物の感染から守っている。また、宿主の核酸が自然免疫機構によって認識されると、自己免疫疾患になることが知られている。よって、核酸が誘導する自然免疫応答のメカニズムを明らかにすることは、感染症と自己免疫疾患を理解するために重要である。 形質細胞様樹状細胞(以下pDC)は、TLR7/9によりI型インターフェロンを誘導することで、感染防御応答に関わっている。過去の報告から、pDCからのI型インターフェロンの産生にはオートファジーが関わっていること,そしてオートファジー関連因子は脂肪滴(Lipid droplets)の形成に関わっていることが明らかになっている。そこで、脂肪滴のI型インターフェロン産生への関与を検討した。インターフェロン誘導性因子であり、脂肪滴上に局在するViperinに着目し解析を行ったところ、Viperin欠損マウスより調整したpDCでは、TLR7/9リガンドによって誘導されるI型インターフェロンの産生が顕著に減少していることが明らかとなった。一方で、ViperinはRIG-like receptorによって誘導されるI型インターフェロン産生や、TLRやNod-like receptorを介した炎症性サイトカイン産生には関わっていなかった。ViperinはTLR7/9の下流でシグナル伝達因子として働くIRAK1とTRAF6に結合し、これらの因子を脂肪滴周辺にリクルートしていることが明らかとなった。Viperinを欠失した細胞では、TRAF6に依存するIRAK1のK63リンクのユビキチン化が減弱しており、I型インターフェロン産生異常の原因と考えられた。以上の結果から、pDCにおいては、核酸を認識するリソソーム上のTLR7/9からのシグナルが、脂肪適の表面を中継点として転写因子IRF7に伝わり、I型インターフェロンの産生が誘導されると考えられる。
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