研究概要 |
本研究は,細胞-細胞間の空間的なインタラクションを細胞自身にて補填し,3次元相互作用を構築する培養方法に着想し,今まさに細胞同士が接触し,3次元状態を構築しようとしているその場を提供しうる独自のバイオチップの開発,ならびに細胞間相互作用の検討を目的としている. 本年度は,まずCell-to-Cellバイオチップの作製および改良を重点的に行った.バイオチップの作製コンセプトは1)非毒性・透明性を有すること,2)MEMS技術による位置決め精度の向上,3)マイクロ流路を有することとした.開始当初の研究計画からの変更点として,栄養補給の循環効率を挙げ,複数の試薬投与が可能とするためにマイクロ流路の多チャンネル化を行った.次に,上記バイオチップを用いたマウス骨隋由来間質細胞株ST-2による細胞相互の応答の検討を行った.一定期間の培養後にLIVE/DEADの観察を行った結果,86%の生存率が確認され長期間の細胞培養が可能であることが明らかになった.また,全RNAを抽出してRT-PCRによりmRNAの発現量を調べた結果,2次元培養(単層培養)群と比較してCell-to-Cellバイオチップで培養した培養群はHSP70の発現が優位に低下することが確認された.HSP70は代表的な熱ショックタンパク質で,熱刺激のみならず様々な刺激・ストレスによって発現することが知られている.つまり本研究で作製したCell-to-Cellバイオチップは単層培養に比ベストレスが少なく,より生理的環境下に近い状態で培養できることが示唆された.
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