研究概要 |
本研究は,細胞-細胞間の3次元相互作用に着目し,3次元状態を構築しようとしているその場を提供しうる独自のバイオチップの開発,ならびに細胞間相互作用の検討を行い,3次元組織構造体の再構築への展開を目的としている. 本年度は,次世代3次元培養方法として提案されているスフェロイド培養方法を改良したトロイダル形状3次元細胞凝集体の提案とその培養チップの作製を行った.スフェロイド培養は直径200μmを超えると培地の供給および老廃物の除去ができずに,中心部において細胞が壊死することが知られている.そこで本研究では,スフェロイド中心部を培地の供給や老廃物の除去を行うために開放したトロイダル形状の細胞凝集体を提案し,その培養チップをMEMS技術(マスクレス・グレースケール露光)を使って作製した.上記培養チップにマウス由来軟骨前駆細胞株ATDC5を播種した結果,トロイダル形状細胞凝集体の作成に成功した.一定期間の培養後にLIVE/DEADの観察を行った結果,99%の生存率が確認され長期間の細胞培養が可能であることが明らかになった.また,アルシナンブルー染色を行い細胞内グリコサミノグリカン量を定量した結果,市販のスフェロイド培養器で作成した3次元細胞凝集体と比較して,トロイダル形状3次元細胞凝集体が軟骨細胞の分化を約1.7倍促進することが観察された. 今回作成したトロイダル形状3次元細胞凝集体は,中心孔を利用した三次元的な組織のアセンブリなどが考えられ,中心孔の方向性を制御し三次元的にアセンブリすることで,血管系や神経系の導入を含めた機能性をもった組織の再構築が可能になると考えられる.また,その機能性を有する三次元組織構造体の再構築に応用して,バイオアクチュエータ,再生医療,ドラッグデリバリーなどの多岐にわたる展開が期待される.
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