循環器系疾患に関して、動物実験により血管の内皮細胞上の遺伝子発現や病態の経時的変化の観察が可能であるが、血行力学の正確かっ詳細な情報と比較できれば、その機序が一層明らかになり、より高度な診療および予防方法を確立できる。本研究では、小動物のミクロンレベルの血管内血流場を正確かつ詳細に再現し、血行力学の情報を得る方法として、超音波画像解析による血流情報と数値解析結果の間の誤差をフィードバックしながら計算を行う「小動物の血流の超音波計測融合シミュレーション」を開発する。 本年度は、まず、ポリビニルアルコール(PVA)ゲルを用い、複雑な形状を有する微小流路モデルの作成に取り組み、そのノウハウを得た。実際に、PVAゲルを用いて曲がりや狭窄を有する流路や、ラットの脳血管形状を転写した流路を作成することができた。また、超音波計測融合シミュレーションを行うため、作成した微小流路モデル内に流れを発生させ、超音波PIV計測により流速の情報を得ることを試みた。しかし、現有の機械走査式の超音波プローブを用いる超音波装置による超音波Bモード計測では、80frame/sの計測が限界であり精度が良くなかった。これに関しては、来年度、超音波プローブを電子走査式に交換し、1000frame/sの計測が可能になるため、その上で再度検討を行うことにする。一方で、超音波Bモード画像から血管の輪郭をパターンマッチングにより獲得し、それと同時にプローブの位置を位置検出装置で認識することにより、3次元の数値シミュレーションの実行に必要な血管形状を得る方法を確立した。また、その方法の生体計測に対する有用性を、ヒトの指の動脈(φ約1mm)やマウスの頸動脈を実際に計測して確認した。
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