研究概要 |
本研究は、脊柱の疾病の予防への貢献を目的としたCT画像における脊柱の解析であり、工学的な技術の支援による脊柱の詳細な形態解析を目指している。今年度は、1.前年度に取り組んだ1000症例規模の椎体海綿骨の骨密度の計測値を統計的に解析し、骨と骨粗鬆症の専門医が参加する国際会議で発表、2.椎体の形状((1)幅、(2)高さ、(3)深さ、(4)断面積)と骨密度の関連の解析、を計画した。 今年度の成果として、1.については、骨粗鬆症、筋骨格、および放射線学を専門に扱う3つの国際会議で骨密度の最新の解析結果を発表した。さらに、この成果は日本骨代謝学会の英文誌に掲載された。2.については、「計算解剖学」(文部科学省科学研究費補助金新学術領域)で実施している研究と連携し,椎体の形状を自動的に計測するコンピュータアルゴリズムを設計した.このアルゴリズムを利用して475症例の第1腰椎の形状と骨密度(体積)の関連を調査した。その結果、骨密度は椎体の高さ(全部、中央部、後部のすべて)と有意な相関がなかった一方で、幅、深さ、および断面積と負の相関関係があった。また、年齢と椎体特徴量の変化を調べると、加齢により骨密度が低下し、断面積は拡大する傾向が見られた。以上の結果から、加齢によって骨の断面積が拡大するため、骨密度が低下し、結果として骨強度の低下につながる可能性が示唆された。この研究成果を欧州骨粗鬆症会議で発表し、骨粗鬆症の専門医から好評を得た。 本研究プロジェクトはこれで終了するが、将来的にはコンピュータアルゴリズムを駆使し、脊柱アラインメントとの関連性等も含めてすべての椎体で同様の解析を行い、椎体骨折の危険因子の解明やその予防法を議論するための基礎データを提供していきたいと考える。
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