研究概要 |
近年,拡散テンソル画像法(DTI)や神経造影法(Neurography)による神経線維束の描出が盛んに行われている.DTIは主に脳神経の描出に用いられ,脳機能の解明や脳梗塞・脳腫瘍の描出に有効な手法である.また,線維追跡(tractography)によりDTIからの神経線維描出も盛んに研究されている.Neurographyは主に末梢神経系の描出に用いられており,神経系に生じた異常を画像として表示することができ,悪性腫瘍を描出しうる.上記手法の精度向上は,神経系疾患の診断支援になるばかりでなく,脳神経組織の機能的結合評価など様々な応用が期待されている.本年度は,DTI計測および線維追跡の精度向上を目指し,拡散テンソルの異方性を強調したDTI計測法および線維交叉部における誤追跡,未追跡を低減する新しい線維追跡手法の開発を行った.具体的には,DTI計測では,一般にb値をパラメータとして撮像を行うが,同一のb値に対しても複数の撮像パラメータセットを生成することが可能であり,本年度はこのパラメータセットを拡散異方性の1つであるfractional anisotropy (FA)を強調できるように選択する方法について検討した.このFAを強調したDTI計測を用いることにより,異方性を指標として実行される線維追跡の精度向上に寄与するものと考えられる.また,上記の撮像法を検討する際に構築したシミュレーションシステムにより,拡散強調画像法を用いた機能的MRI (fMRI)の撮像パラメータについても検討した.本手法は,現在一般的に用いられているBOLD方を用いたfMRIより時空間分解能の向上が可能である手法として期待されている.さらに,我々は独自の手法である類似度探索を用いた線維追跡法の開発した.本手法により線維交叉部における誤追跡,未追跡を低減することができ,線維追跡精度の向上を実現した.
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