研究概要 |
本研究では,並列型Kirkpatrick-Baezミラー光学系を開発し,高密度X線ナノビームを形成することを目指している.並列型Kirkpatrick-Baezミラー光学系は,従来型のKirkpatrick-Baezミラー光学系に比べ縮小倍率の観点から光子密度をおよそ2倍以上に向上させることが可能である.本年度は,エッジ部が高精度に楕円形状に加工されたエッジミラーを完成させ,SPring-8にて集光実験を行った.エッジミラーを形状誤差10nm以下の楕円となるように,EEM加工装置と差分製膜法によって形状修正した.また,2枚のミラーを高精度にアライメントするために専用のミラーマニピュレータを開発した.本ミラーマニピュレータでは,2枚のミラーの入射角を2枚の相対位置関係を崩さないように調整することができる.また,ミラー間の直角度を接近させた状態で調整できるように回転中心をエッジ部分に配置した.実験はSPring-8 BL29XUL第2実験ハッチで行った.X線エネルギーを11.5keVにセットし,作製したX線ミラーに反射させた.まず初めに,1次元の集光特性の評価を行った.エッジから100umの場所では,縦46nm,横58nmの集光径(FWHM)が得られた.この結果,2枚のエッジミラーは高精度に作製されていることを確認した.さらに,2枚のミラーに反射させ,2次元集光を行った.この結果,縦横とも約200nmの集光径(FWHM)が得られた.理想値よりも悪化した理由としては,アライメントエラーが考えられ,今後アライメントシステムを改良し,高精度アライメントが可能なシステムを開発することで,顕微鏡に応用可能な高密度X線ナノビームを形成可能であると結論付けた.
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