長期安定化プローブとして利用できるようにするためのNDの合成技術基盤の開発を主に行い、以下のことを明らかにした。爆発法で合成された粒径約4nmのND(ND4)に100KeVのエネルギーで、1x10^<16>/cm^2のMn^+イオン注入を行った。注入後、内部に形成された欠陥を低減するため、700℃、2時間のアニールを、また表面に形成されたグラファイト成分除去するため、425℃、5時間の空気酸化を順次行った。内部に注入されたMn^+イオンの状態を調べるため、X-band ESR、およびL端軟X線吸収分光測定を行った。まず、X-band ESRでは、アニールと空気酸化したMn^+注入NDのみで、Mn^<2+>に由来すると思われる6本の信号が見られた。さらに注入したMn^+イオンのうちMn^<2+>になっている割合を調べるため、MnL端軟X線吸収分光測定を行ったところ、注入直後は、いくつかのイオン状態が混在しているが、アニールすると、注入したイオンのほとんどが2価に近い常磁性イオンの状態を取ることが分かった。この状態は、空気酸化により変化しないことから、ND中の格子上に強固に配位していると考えられた。合成したMn^+イオン注入NDのMRIでの効果を調べたところ、T_1短縮効果を顕著に示すことが分かった。以上の結果から、Mn^+イオン注入により磁性ナノダイヤモンドを創製できたと言える。また、アニールと空気酸化処理した磁性ナノダイヤモンドを488nmの光で励起したところ、近赤外蛍光が検出できた。この蛍光は、Mn^+イオン注入により、ND内部にNVセンターが形成された結果ではないかと考えている。以上の結果は、1回の単一のイオン注入法のみで、磁場・光応答性マルチモーダル分子プローブが合成できたことを意味する。
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