研究概要 |
平成20年度までに,微細なピンを用いてリコンフィギュラブルな微小流路を考案,試作した.適切なピンのハンドリングのアルゴリズムを構成することにより,気泡も含めた非液体をもハンドリングできることがわかった.しかし,計画時に想定しなかった問題として,ピンの駆動系の実装が想定よりもはるかに大型になり,細胞培養を伴わない基礎的な実験はともかく,細胞をインキュベートできる系への組み入れの難易度が高く,生体医工学・ライフサイエンスへの貢献ができるという実質的な成果への段取りをつけにくいという問題に直面した.そこで,以下の2面から,この問題の解決を試みた. 1. 直接のピン操作を必要としないリコンフィギュラブル微小流路の検討 2. 既存のCO2インキュベータに組み入れることのできるピン駆動系の作成 1に関しては,市販のローテータを用いてチップ全体に慣性力を与えることで,流路をポンプできるような構成を目標とした.まず,各種条件下でピンを駆動させられる力の測定を行い,ピンの駆動力は,ピン表面にかかるメニスカスの長さ,次いでピン上下の壁の間隔の2要素でほぼ決まることを確認した.これに基づき,外部からピンを直接動かす必要のないチップのプロトタイピングを行った. 2に関しては,平成21年度に作成したXYZ3軸のアクチュエータのうち,もっとも小型で十分な性能を確認できたZ軸部分のアクチュエータ(超音波アクチュエータ)と同様の原理を,XY2軸にも適用したアクチュエータを新たに作成した.結論として,この2つの試みは,ともに成功の見込みがあるものと判断したため,来年度は,この双方の試みを並行して継続することとしたい.
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