研究概要 |
本研究では,小型かつ高生体適合性を有する血液ポンプを目指し,独自の偏心駆動型軸流式血液ポンプの開発を行っている.本年度は当初,溶血試験による血球破壊への影響に関する調査を主たる取り組みとする予定であったが,昨年度に目標性能(2L/minで80mmHg)での羽根車回転数の低速化がなされた9,400rpmの条件について,試験装置の回転部摩耗やモータ過負荷などの不調により溶血試験での前段階である4時間を越える連続運転(耐久試験)での目標性能維持が困難となったため,(1)短時間での低速運転条件下での可視化計測によるポンプ内部流れの把握と(2)数値解析によるポンプ内部流れと偏心駆動効果の要因の解明を行うことにした.対象とした偏心量(羽根車中心軸とケーシング中心軸の距離)は0.4mmとした.(1)については,水を作動流体,ガラスビーズ(平均球径50μm)をトレーサとして光源のYAGレーザとカメラによる高速撮影により撮影し,羽根車周り流れの下流側とケーシング拡大部付近の定性的な流れが把握できた.(2)については,偏心駆動なしのポンプと羽根車単体回転数と偏心駆動回転数を等しくした偏心駆動ポンプを対象とし,作動流体の粘性を血液と同条件にした非定常解析を行い,水力性能において試験結果と同様の結果となり,昨年度の双方の結果が異なる問題を解消した.また,羽根表面の圧力分布では,偏心駆動時にケーシングに近い片側の羽根端部において圧力が高く,これによるポンプ内部流れの上昇された圧力が下流でも高く維持されることがわかった.これより片側の羽根の遠心力増加が偏心駆動効果の主たる要因と考えられた.一方で内部流れのせん断速度分布から血球破壊に影響を与えると考えられる部位についても検討した.以上のうち,(2)について国際会議で1件発表し,海外雑誌に1件投稿し,情報発信を行った。
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