研究概要 |
大型放射光施設Spring-8を用いた4D in vivo-CTでは、撮影を呼吸と心電と同期させることによってモーションアーチファクトがかなり軽減でき、直径150μmの気管支までできた。そこで、本撮影方法を用いて健常時と喘息時の末梢気管支の動態観察を行った。健常時は、直径の細い末梢気管支ほど変形率が大きく、気道圧15cmH20時には約2倍直径が増加する。また、0cmH20時での直径の大きさで2つのグループ分けを行いそれぞれの変化率を比較したところ、5cmH20時には有意な差がなかったが、15cmH20時には直径の細い末梢気管支のほうが大きかった。これらの結果は、気管支全体で見ると、変形が不均一かつ非線形であることを示唆している。また、喘息時の直径変化率を健常時と同じように直径の大きさで2つのグループに分けて比較したところ、直径の大きい気管支では有意な差はなかったが、末梢気管支では喘息グループのほうが有意に小さいことがわかった。 撮影で得られたCT画像から実形状の末梢気管支モデルを構築し、呼吸に伴って形状が変形する際のモデル内ガス拡散をシミュレーションした。ヒトの安静呼吸を想定し、モデル上部断面で最大レイノルズ数が1.0~3.0、周波数0.25Hzとなるようにモデル末端部から各断面積比に応じた正弦波的な流速を与えた。空気で満たされているモデル内にモデル上部から酸素が流出入する場合を想定した。気管支壁の変形は移動境界問題して考慮し、モデルの体積の最大変化率が0(壁が移動しない剛体モデル),0.25, 0.5となるように、モデル上部の流出入口の重心点を原点として気道壁を正弦波による一様な変形を仮定した。その結果、気管支変形モデルのほうが酸素拡散が高く、気管支の変形がガス輸送を促進していることがわかった。 これらの結果は、喘息時は呼吸の際の末梢気管支の変形が小さいことによってガス拡散が減少し呼吸困難の一因となっていることを示唆している。
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