現在、開胸手術なしに生命維持を可能にする経皮的心肺補助装置(PCPS)や体外式膜型人工肺(ECMO)などの緊急医療で使用されている補助循環ポンプは、短期使用が前提である接触式の軸受を採用しているため、危機的状況を脱した後の固体接触で生じる軸受の磨耗による耐久性や、溶血や血栓形成などの血液適合性に課題が残っている。そのため、長期耐久性と低溶血性、耐血栓性を有する磁気軸受や動圧軸受を使った非接触の軸受が求められている。本研究では、センサレスで動作する高い信頼性を有する動圧軸受を採用し、長期耐久性と血液適合性に優れた長期補助循環使用を目的に、血液自身を潤滑液として浮上回転する遠心血液ポンプを研究開発する。本年度は、動圧ポンプの形状最適化を目的に、数値流体解析とインペラの変位評価試験、血液適合性試験を実施した。動圧軸受の数値流体解析では、多円弧軸受を対象に、円弧数と軸受深さ、軸受隙間の3つのパラメータの最適値を求めた。数値流体解析を実施した結果、動圧軸受の至適形状が4円弧、軸受深さ100μm、軸受隙間100μmであることを示すことが出来た。次に、数値流体解析の妥当性を検証するため、インペラの変位評価試験を実施した。本試験では、レーザー変位計を用いて、数値流体解析で得られた至適形状のインペラの挙動を計測した。その結果、動圧軸受の形状が4円弧、軸受深さ100μmのモデルで、軸受隙間が90μmと、数値流体解析で推定された挙動を得ることが出来た。最後に至適形状のインペラを有する血液ポンプの血液適合性試験を実施した。本試験では、作動流体に牛血を用い、体外循環時の駆動条件で駆動させたときの赤血球の壊れやすさと抗血液凝固能を評価した。これらの試験の結果、至適形状のインペラを有する血液ポンプでは、広い軸受隙間と優れた血液適合性を有することを確認することが出来た。
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