細胞モデルの構成要素に関する生理学知識を表現するオントロジーを設計した。具体的には、細胞のチャネル電流やイオン濃度などの細胞モデルに現れる物理量、および、それらを定義するために必要な細胞構造、細胞内区画、生化学物質などに関する概念と、概念間の関係を定義するための基本スキーマを設計した。生命科学に関連するオントロジーはこれまでにも様々なものが提案・公開されているが、本研究で設計した細胞生理学分野で用いられる具体的な物理量に関するオントロジーはこれまでにない新しいものである。細胞モデルの効率的に開発できるようにするためには、細胞モデルの意味情報に即した開発支援が重要である。細胞モデルは数式として定義され、その数式は細胞に関する物理量の関係を定義したものであるため、細胞モデルに意味情報を付加するためには、本研究で設計した物理量のオントロジーが非常に有用である。設計した基本スキーマに基づいて構築したオントロジーのプロトタイプはhttp://cybow.astem.or.jp/cpo/にて公開するとともに、国内外の学会にて関連する発表を行った。 次いで、生理学モデルの形式的記述に対して意味情報を付加する方式を検討した。検討方式を検証するため、高機能な細胞モデルについて形式的記述を作成し、実際に前述オントロジーによるアノテーションを行った。また、アノテーションを簡便に行えるようにするため、研究代表者が本課題とは別に開発している細胞モデル編集ソフトウェアCybowModellerに、アノテーション付加機能を実装した。なお、CybowModellerのソースはhttp://cybow.sourceforge.net/にて公開されている。
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