研究概要 |
本研究の目的は筋音図を用いてレジスタンストレーニング初期に生じる筋力増強に筋線維の種類が与える影響を評価することである. 平成21年度では,計測システムを構築し,1名に対して予備実験を行うにとどまった.また,測定したデータを用いて測定信号の処理手順を定めた.各項目の詳細を下記に示す. 計測システムの構築:以前に自作した右肘関節の屈曲力を測定する機器に対して左肘関節の屈曲力も測定できるように計測装置を改良した.また,計測された屈曲力の日内変動を確認するために3秒間の最大収縮を5分以上の休憩を挟みながら5回行い最大屈曲力の変動係数を求めた.変動係数は約4%であった. 予備実験:予備実験は計測システムの動作確認と本研究で行うトレーニング内容で筋力が増強するかどうかの確認のために行った.予備実験では,3秒間の最大収縮を5分以上の休憩を挟みながら5回行い,得られた最大値を100%MVCとした.次に10%MVC/秒のランプ状収縮時における肘屈曲力および上腕二頭筋の筋音図,上腕二頭筋と上腕三頭筋の筋電図を測定した.その後,2週間の間に6回のレジスタンストレーニングを行い,また,初めと同様に100%MVCおよびランプ状収縮時における各信号を測定した.最大屈曲力は2週間のトレーニングにより約12%増加していた(対応のあるt検定により求めたp値は0.007であった). 処理手順:ランプ状収縮時における上腕二頭筋の筋音図はある屈曲力(以下,変屈点)を境に急峻に増加することが知られている.本研究では筋線維の種類による筋力増強への影響はトレーニングにより変屈点が変化するどうかで評価する.整流平滑化した筋音図に対して微分フィルタを用いたゼロ位相フィルタリング処理を行った信号の負のピークおよび整流平滑化した筋音図を近似したスプライン関数の2階微分の正のピークを変屈点の候補として表示するプログラムを作成した.
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