本申請研究は、膜融合を介して生細胞ミトコンドリア(Mt)への物質送達を可能とする、Mt標的型ドラッグデリバリーシステム(DDS):多重型MITO-Porterの開発を行う。本年度は、遺伝子搭載型MITO-Porterの開発を行い、癌細胞(疾患細胞)Mtへの遺伝子送達およびその評価を中心に研究を進めた。また、H21年度までに構築したmtDNAを標的とするDNaseI搭載MITO-Porterの機能評価も行い、我々の開発したDDSが生細胞Mt内でmtDNAに対して機能発現する事(遺伝子治療コンセプト)を示した。 1.遺伝子搭載型多重型MITO-Porterの構築:遺伝子(pDNA)ナノ粒子をMt融合性脂質膜およびエンドソーム融合性脂質膜でコートした多重型MITO-Porterを構築した。粒子形・表面電位測定によって目的の構造体が形成されていることを確認した。 2.癌細胞Mtへの遺伝子導入とその最適化:遺伝子封入MITO-PorterをHeLa細胞に添加した後に、Mt内に導入されたDNA量をリアルタイムPCR法によって定量した。その結果、MITO-Porterが市販の遺伝子導入試薬よりも飛躍的に高いMt送達能を有する事を確認した。 3.癌細胞Mtを標的とした遺伝子治療の試み:DNaseI封入MITO-Porterを癌細胞に添加し、DNaseIによるmtDNAの切断効率をリアルタイムPCRによって定量した。その結果、本キャリアはmtDNAを選択的かつ効率的に切断することが確認され、mtDNAに分子を作用させる事が可能である事を確認した。 本申請研究では、遺伝子搭載型多重型MITO-Porterの開発に成功し、本キャリアによる生細胞Mtへの遺伝子送達を確認した。さらに、mtDNAを標的とした送達分子の機能発現にも成功し、本DDSのMtを標的とする遺伝子治療キャリアとしての有用性を示すことができた。
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