癌は現在死亡数のトップの疾患であり、その治療法の開発は不可欠である。そこで、研究代表者は転移性乳癌細胞を標的とした新規ドラッグデリバリーシステム材料の作製を行っている。これまでに、抗癌剤を担持したデンドリマーと呼ばれる球状高分子とコラーゲンからなるハイブリッドゲルを作製した。単に薬物を包埋したコラーゲンゲルと比較して、薬物運搬高分子をハイブリッドしたゲルでは転移能が高い乳癌細胞に対して選択的な細胞毒性を示すことを明らかにしてきた。しかし、その細胞選択性や薬理活性の向上が必須である。 そこで、本研究では、コラーゲンゲルに包埋する薬物坦持ナノ粒子の改良を行った。これまでは血中滞留性の高いポリエチレングリコール修飾デンドリマーを薬物運搬体として用いたが、ポリグルタミン酸を薬物運搬体として用いた場合、コラーゲンゲルからの拡散が抑制され、転移性が高い乳癌細胞への選択性が向上することがわかった。また、コラーゲンゲルとの親和性を向上させるためにコラーゲンペプチドを結合させたデンドリマーを作製したところ、デンドリマーに結合させることでペプチド鎖の高次構造形成性が向上することが明らかとなった。この高次構造形成性はペプチド鎖長、配列、ポリマーの構造や分子量に依存することも明らかとなった。また、これを包埋したコラーゲンゲルでは、細胞に対する薬理活性が著しく向上した。 以上より、薬物運搬高分子の改良によって、細胞選択性や薬理活性の向上が可能であることが明らかとなった。
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