非ウィルス型の遺伝子治療において、一般に外来遺伝子の発現は極めて短期間で自然消滅してしまうため、有効な治療に結びつきにくい。そのため効果が持続する叙放タイプの遺伝子導入製剤が強く望まれている。そこで、本研究では、ヒアルロン酸で被覆したDNA複合体を自己硬化型アパタイトセメント中に包含させる。または、アパタイト薄膜でマクロカプセル化することにより、持続性のある注射可能な核酸製剤を創製することを試みた。 自己硬化型アパタイトセメントはリン酸水素カルシウム・二水和物とリン酸四カルシウム、さらに添加剤としてアテロコラーゲン、デキストランまたはポリエチレングリコールを加えて混合粉砕し、リン酸水溶液で懸濁させることで調整した。これらのアパタイトセメントにDNA複合体粒子を内包し、破骨細胞様のMLC-6細胞を加えたところ、MLC-6細胞はアパタイトセメントと相互作用してアパタイトセメントを溶解しDNA複合体を効率良く放出した。同様に調整したDNA複合体含有アパタイトセメントスラリーをマウスの大腿骨近傍に投与して、そのアパタイトの溶解挙動を評価したところ、アパタイトセメントは経時的に分解し、その分解速度はポリマーの種類・量に依存した。 DNA複合体内包アパタイトマイクロカプセルはヒアルロン酸で被覆したDNA複合体を疑似液体に浸漬することで調整した。アパタイトによるカプセル化を電気泳動法で、走査型電子顕微鏡で評価したところDNA複合体が効率良くアパタイトに内包されていることが確認された。このDNA複合体内包アパタイトマイクロカプセルは酸性条件下でDNA複合体を比較的早く放出した。 これらの結果から、DNA複合体をアパタイトに含有させることで、その条件によって、DNA複合体の放出速度を制御できることが示された。
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