研究概要 |
近年軟性内視鏡による検査,手術が普及してきている.現在利用されている軟性内視鏡は推進力を持たないため後ろから押し込む必要があり,柔軟で曲がりくねった腸内を奥深く入れるのに高い技術が要求される.管内推進装置としてタイヤやプロペラのような回転体を使うと,回転体の反作用を受ける部位は回転しないため,推進時に腸内で摩擦を起こして傷つけてしまう.またタイヤのような無限回転体は回転軸の密閉が難しく本体が大きくなってしまう.ミミズのような伸縮運動は密閉が容易であるが突っ張る節は腸管に固定されるが,細くなり引きずられる節は腸管と摩擦を起こしてしまう.これに対して我々は細長い胴体が螺旋形状となって,螺旋形状を維持しながら捻転動作を行う螺旋捻転運動による移動方法を提案する.螺旋捻転運動では胴体が壁と接触する部分全体が転がる運動となるため,摩擦が生じず安全である.また動作に必要な自由度が少なく,簡易な構造で動作を生成できるため,細管内の移動機構に適している.さらに本体を柔軟な構造とできるため,腸等の柔軟な管内でも利用可能である.この装置は内視鏡だけでなく,工業用途での配管検査等にもりようかのうである. 本年度はまず螺旋捻転運動の基本的な原理を確認した.直系10mmのコイルばねからなる胴体内部にワイヤを螺旋状に通し,片端を固定してから反対側を強く引くと,胴体が縮んで螺旋状に変形する.このワイヤを胴体の円周状に複数通し,円周に沿って順番に引くと胴体は螺旋捻転運動を行なうことを確認した.さらに螺旋捻転運動を行なう装置にビニールチューブを被せると,ビニールチューブが動き,推進力を発生していることを確認した.ワイヤ駆動方式は,軟性内視鏡の先端をこの構造にして,コントロールケーブルを通じて遠隔操作で駆動する方法等で利用可能である.しかしこの装置ではワイヤを引くために大きなプーリとモータを使うため,自立ロボットとして内視鏡全体がチューブの中に入っていく方式には向いていない.そこで駆動装置の小型化するために,ワイヤの変わりに形状記憶合金を用いたモデルを開発した.プーリでワイヤを引く代わりに形状記憶合金自身が伸縮することで螺旋捻転運動を生成し,チューブ内を自走できることを確認した.
|