研究概要 |
医療用軟性内視鏡は推進力を持たないため,柔軟で曲がった腸内を奥深く入れるのに高い技術を必要とする.そこで我々は細長い胴体が螺旋形状となって,螺旋形状を維持しながら捻転動作を行う螺旋捻転運動による移動方法を提案している. 前年度にコイルばね内部に螺旋状に形状記憶合金を通した試作機により管内での移動を確認したが,ばねが硬くあまり大きな螺旋に屈曲しなかった.そこで今年度はまず胴体となる芯材をシリコンゴムにより自作し,この回りに螺旋状に形状記憶合金を張る方式でより大きく屈曲する試作機を作成し,直径12mmの試作機で直径20mm程度の屈曲管内での走行を確認した.形状記憶合金方式はバッテリを搭載すれば自律動作可能となる可能性があるが,動作速度が遅いという問題がわかった.また形状記憶合金同士が接触させてはならず,これ以上の小型化が難しかった. そこで本年度はさらに,空気圧式の螺旋捻転駆動装置を開発した.3本の薄肉シリコンゴムチューブを糸の周りに捻りながら束ね,シリコンゴムで接着する.このチューブの一本に圧力をかけるとそのチューブだけが延びて,螺旋形状に変形する.3本のチューブに順に圧力をかけると螺旋捻転運動になる.本方式では小型化が容易で直径が15mmと5mmの試作機を開発した.また応答速度も良く,直径5mmの試作機は内径20mmの管内を40mm/sの速度で移動した.さらに形状記憶合金の方式よりも柔軟で,内径15mm曲率半径15mm屈曲角度90°程度の急な屈曲パイプ内も移動できた. 本研究では簡単な小型な装置でも螺旋捻転運動により容易に推進力を得られる事を確認した.現在はまだカメラ等は取り付けていないが,空気圧式の中央の糸を電線に置き換え,カメラを先端に搭載すれば容易に内視鏡への応用が可能であり,螺旋捻転推進は有用な推進方式であることが分った.
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