研究課題
本研究の目的は、『配向制御された高性能圧電薄膜』をマトリクス状に配列させることで、高性能な医療用超音波プローブを実現することである。超音波トランスデューサ材料には、電気機械結合係数が優れるKNbO_3を用い、基板上に形成されたKNbO_3圧電膜を用いることをコンセプトの基本とした。研究開発の手順として、(1) 良好なKNbO_3圧電製膜方法の確立、(2) 製膜されたKNbO_3圧電膜の材料特性および超音波トランスデューサの評価、(3) 評価結果を元にしたアレイ化の設計、(4 )KNhO_3圧電膜のアレイ化、(5) アレイ電極からの制御基板への配線、と5つのパートに分けた。現在は(3)から(4)のパートへ移行する段階である。製膜手法に関しては、バッファ層及び電極の作製にはスパッタリング法を用い、KNbO_3膜の製膜には水熱合成法を用いた。スパッタリング法、水熱合成法ともに、電極のパターニングおよび圧電膜のパターニングが可能な製膜技術であることから、トランスデューサのアレイ化が期待される。そこで、製膜されたKNbO_3圧電膜の材料特性および超音波トランスデューサの評価を行った。材料定数の測定は、電気特性、圧電特性の測定および等価回路を用いたフィッティングにより求めた。次に、材料定数を基にKNbO_3圧電膜のアレイ化に関するシミュレーションを行った。超音波イメージングにおいて、高分解能化を図るためには広帯域化、高周波が重要であるが、広帯域化については、水熱法で製膜したKNbO_3圧電膜は密度が低く、音速も低いことから生体や高分子材料と音響インピーダンスマッチングに優れることから、広帯域化が期待できることが分かった。製膜されたKNbO_3圧電膜の材料特性および超音波トランスデューサの評価に関しては、実際に良好な圧電性が得られ、また実験により90MHz以上での高周波帯において超音波の送受信が可能であることが確認された。今後は、幅15μm、ピッチ間隔15μmで下部電極が1次元配列された基板を用い、電極上に厚み15μmのKNbO_3圧電膜を製膜し、下部電極と直交させた形状で幅15μmの上部電極を形成しマトリクスアレイを作製する予定である。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Mater.Res.Soc.Symp.Proc. Vol.1139
ページ: 1139-GG03-52-56
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