研究概要 |
高性能な医用超音波画像診断に向けて、超音波プローブのコンパクト化と高周波数化が課題となっている。そこで本研究においては配向制御された圧電性結晶膜の厚膜を用いて、巨大圧電特性を積極的に利用した高感度な送受波感度を有する超音波トンランスデューサを開発することを目的とした。 配向制御された圧電結晶膜の製膜においては、下部電極と圧電結晶の核形成にはスパッタリング法を用い、圧電結晶の成長には水熱合成法を用いるといったオリジナルな手法を提案を行い、導電性酸化物であるSrRuO_3(SRO)を製膜し下部電極とし、SRO上に圧電結晶であるKNbO_3(KNO)を製膜した。またKNOの表面にPtを製膜することで上部電極とした。KNOは比誘電率が他の無機系圧電結晶に比べて低いことから、高周波における超音波の受信感度の向上が期待される。そこで本手法により製膜された結晶膜の材料定数を測定し、得られた結果を基に、超高周波超音波トランスデューサの設計を行った。測定した比誘電率および圧電d_<33>定数,圧電g_<31>定数,はそれぞれ約500,80pm/V,8mVm/Nと圧電結晶として良好な結果が得られた。次に、超音波の送波感度、受波感度について基礎動作特性の評価を行ったところ、中心周波数100MHzにおいて、S/N比40dBで超音波の送受信が可能であることが分かった。画像用の超音波トランスデューサとして期待できることから、今後はMEMS技術等を用いて圧電結晶のアレイ化、配線、マッチング層の作成を行い、より実用的な超音波トランスデューサの開発を目指す。
|