研究概要 |
高度な工学的技術を用いて,より小さな侵襲で自然な回復を実現する低侵襲医療に対する国民の期待は大きい.本研究では,主に脳動脈瘤の治療を目的とした小型脳血管用カバードステントの作製と動物実験による評価,またその技術を応用して失われた弁機能の再生を目指す人工静脈弁ステントの作製と耐圧・流速性能評価を行った.エレクトロスピニング法により小型バルーン拡張型及び自己拡張型脳血管用カバードステントの試作を行い,バルーン拡張型についてはウサギへの埋入実験において,ステント表面がステント両末端から徐々に内膜に覆われる様子が観察され,約2週間で内膜化が完了することが分かった.これは約2週間で患者が抗血栓療法を必要としなくなる可能性を示唆している.また,薬剤の担持および徐放を行う薬剤溶出カバードステントを作製した. さらに,in vivoにおいて血管内膜組織再生が見られた多孔質膜を,静脈弁不全の治療に応用することを考え,ステントを基礎骨格とし,経皮的に挿入可能な人工静脈弁(PVV)の作製を行った.PVVはステント表面にエレクトロスピニングにより弁膜を形成させることで作製した.In vivoで想定される種々の条件下で耐圧・流速評価を行い,適当な弁膜設計により静脈弁不全を治療し得る性能を有するデバイスを作製した.エレクトロスピニングにより作製される膜は,優れた細胞接着能を有する足場となることが示されてきたが,同時に耐圧などの物理的強度を実現することが難しく,適当なデザインによりそれらを両立させることに成功したものである.
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