研究課題
これまでに我々はリポソーム型微小気泡(バブルリポソーム(BL))を利用し、集束強力超音波(HIFU)より低い超音波照射強度でのがん温熱療法の開発を進めてきた。この方法では、BL内の微小気泡が、キャビテーション誘導に必要な超音波照射強度の閾値を低下させうる。実際に、がん細胞を傷害できないような強度の超音波照射でもBLとの併用によりキャビテーションが誘導され、その時生じるマイクロジェット流や発熱によりがん細胞を傷害できることを見出した。しかし、担がんマウスに対しBLと超音波照射の併用によるがん温熱療法を行っても、その抗腫瘍効果は不十分であった。これはBLと超音波照射の併用においてがん組織内の一部のがん細胞しか死滅しないためであると考えられた。このときがん組織内では温熱療法に伴う炎症性サイトカインやHSP(Heat Shock Protein)などが放出されており、がん免疫が誘導されやすい微小環境になっていると考えられる。そこで本研究では、上述の超音波を利用したがん温熱療法において取り残されたがん細胞の退縮を目的に樹状細胞免疫療法との併用効果を検討した。マウス結腸がんColon26細胞をBALB/cマウス後背部皮下に移植8日後にBLを腫瘍内投与した。その後すぐに腫瘍に対し経皮的に超音波を照射した。超音波照射後、1,2,3,5日後にマウス骨髄由来樹状細胞を腫瘍内投与し抗腫瘍効果を検討した。その結果、BLと超音波照射のみで治療した場合、若干の腫瘍増殖抑制効果しか認められなかった。一方、BLと超音波照射によるがん温熱療法で治療した後、樹状細胞を投与した群では、BLと超音波照射のみで治療した群と比べ、高い腫瘍増殖抑制効果が認められた。以上の結果から、BLと超音波照射によるがん温熱療法と樹状細胞を用いた免疫療法の併用が相乗的な抗腫瘍効果の誘導に有効であることが示された。
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