研究概要 |
当初の計画に沿って下記の3項目を実施した. 1. マルチバンド心電・呼吸計による実験と解析 試作したマルチバンド心電・呼吸計を用いて,若年成人を対象に計測を行った,心電については,従来の知見通り,90%以上のR波検出率が得られた.呼吸については,当初の想定よりも感度が低く,ディジタルバンドパスフィルタを適用しないと変動を検出できないことが判明した.原因として,(1)電極位置が乳児計測の場合と異なるため心電に重畳する呼吸性変動が小さい,(2)差動フィルタを導入していなため帯域分離後のS/Nが悪い,の2点が考えられた. 2. 逆フィルタソフトウェアを用いたQT間隔の推定 作成したディジタル逆フィルタソフトウェアを用いて心電信号の帯域を拡張した結果,波形は復元されるものの基線が上昇し続けるという問題が発覚した.そこで,別手法により逆フィルタを再設計し,基線の安定化に成功した.新逆フィルタを適用した心電波形よりQT間隔を算出した結果,市販装置で計測した心電図のQT間隔との相関が0.87であった.QT間隔の算出を目視で行っていることが相関低下の原因と考えられるため,H22年度では専用ソフトウェアを用いてQT間隔を算出し,相関関係を調べる予定である. 3. ノイズ除去回路の適応制御における基礎特性の評価 帰還率が可変のDRL(Driven-Right-Leg)回路について基礎特性を計測し,帰還率の変更によりS/Nが変化することを確認した.ただし,原理上,帰還率が高いほどS/Nが向上することが判明したため,生体への安全性から上限値を設けることとした.また,容量性計測においては,電極毎に結合インピーダンスが異なるため,帰還率の変更のみではS/N向上に限界があることが判明した.そこで,新たに,差動入力信号のノイズ振幅を適応的に調整する回路を試作・導入し,S/Nを向上できることを確認した.
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