当初の計画に沿って下記の3項目を実施した。 1.差動分離フィルタを用いた成人用心電・呼吸計の仕様検討と試作・評価 差動分離フィルタを用いた成人用心電・呼吸計を試作し、ベッドシーツ下に設置した3つの電極のどの2つから差動信号を得るのが良いかを検討した。その結果、(a)心電については臀部-背部から、(b)呼吸については臀部-腰部から検出する方が、高感度であることが判明した。既存の回路接続方式では、3つの電極から2種類の差動信号を取得できないため、新たな接続方式を考案し特許を出願した(特願2011-073940)。新方式を用いると、心電信号に加えて、胸部と腹部の呼吸運動を独立に検出でき、閉塞型の睡眠時無呼吸を簡易的に検出できる見込みがあることを、予備実験にて確認した。新方式は、心電の検出率向上にも寄与することも予備実験において確認した。 2.逆フィルタ後のcECGの解析に基づく、QT間隔および他の時間パラメータの精度評価 H22年度の研究成果であるディジタル逆フィルタソフトウェアを用いて、ベッド式容量型心電計で得られた信号の低周波成分(T波を含む)を復元した。得られた心電図のQT間隔を市販の解析ソフトウェアを用いて評価した結果、参照信号のQT間隔との単相関が、7名の平均で0.92となった。提案法の有効性が確認されたため、成果を電気学会論文誌C(「医療・ヘルスケアにおける工学技術の新展開」特集号)に投稿した(2011年1月23日)。 3.ノイズ振幅調整回路の心電図計測への適用と評価 心電計や脳波計の差動入力信号(正極信号と負極信号)の、ノイズ振幅を自動的に平衡化する提案方式について、理論的にもS/N向上に有効であることを確認した。実験的な有効性を示すH22年度の研究成果と併せて、論文投稿に向けてデータまとめた。
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