研究概要 |
本研究の目的は,肝臓の物理モデルを用いた数理シミュレーションにより,正確な焼灼領域の確保を実現するシステムの開発を行なうことである.初年度には,主に温度分布シミュレータの開発とその評価実験に関する下記の3点に関して研究を行った. (1)肝臓熱物性値取得実験 臨床に耐えうる高精度な温度分布シミュレータを開発するには,生体組織が有する熱物性値の複雑さをシミュレーションに反映する必要がある,特に生体組織は温度上昇に伴い組織の組成が変化し,熱物性値も変化することが知られている.そこで,ブタ肝臓を用いて,シミュレータ精度に大きく影響する熱伝導率および比熱の温度依存性をそれぞれ定常比較法,温度変調法により取得し,その関係性を定式化した(2)温度分布シミュレータの開発 取得した熱物性値に基づき,有限要素法により肝臓RFA用2次元温度分布シミュレータを開発した.シミュレーションでは,肝臓内部に形成される発熱量分布を算出後,温度分布を算出した. (3)In vitroにおける温度分布シミュレータ精度評価実験 開発したシミュレータの精度評価を行うため,摘出したブタ肝臓に対するRFA焼灼実験を実施した.シミュレーションでは,正方形のブタ肝臓モデルを構築し,モデル上辺より中央まで穿刺したRFA針先端20[mm]から50[V]を印加した際の温度分布を算出した.この際,境界条件として,モデル周囲の温度を一定温度とする温度境界条件を設定した.一方,肝臓モデルと同様の寸法を有する実際の摘出ブタ肝臓を用意し.一定温度に保持した水を肝臓の周囲に還流させることで温度境界条件を再現した.焼灼中,RFA針直下の組織の温度を熱電対により実測した.シミュレーション結果とIn vitro実験結果の比較すると,実測値と解析値の温度上昇傾向は類似しておりRFA中のシミュレーションによる温度の予測が可能であることが示唆された.
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