研究概要 |
本研究の目的は,肝臓の物理モデルを用いた数理シミュレーションにより,正確な焼灼領域の確保を実現するシステムの開発を行なうことである.本年度は,臨床に応用する際に必要となる項目に関して研究を行った.具体的には,in vivo環境化において問題となる,血流の存在が血流に与える影響に関して調査を実施した. 肝臓内の細径血管内の血流の存在がRFA施行中の熱伝導現象に及ぼす影響について検討するため,in vivoにて生存ブタを用いた実験を行った.実験では(1)門脈,胆管,肝動脈を糸で縛り毛細血管内の血流を無くした場合,(2)門脈,胆管,肝動脈を開放し毛細血管内に血流を流した場合の2通りについて,それぞれ(a)肝臓実質と血流を纏めたみかけの熱伝導率の測定,および(b)RFA施行中のRFA針周辺組織の温度測定を行った.熱伝導率測定実験の結果,有血流下の熱伝導率は無血流下の約1.2倍となった.これは,有血流下では血流の存在により熱が周囲に散逸しやすくなり,組織全体としての熱伝導率が上昇したためと考えられる.また,温度測定実験の結果,有血流下より無血流下の温度が高く,焼灼5分後には,RFA針最近点Aで有血流下と無血流下で20℃の温度差が認められた.以上の結果より,有血流下では熱が血流に乗って流れやすくなるため,実質と血液を纏めた組織全体としてのみかけの熱伝導率は高くなるが,加温部の熱が周囲に散逸しやすくなるため温度上昇が抑制されることが分かった.
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