体内の機能を画像化する陽電子断層撮像法(PET)は、がんの診断や早期発見、アルツハイマー病などの病態の解明の研究や神経受容体の振舞いなどの脳機能研究に有力な手段として用いられている。より正確な画像を得るためにPET装置の高感度・高解像度化が求められるが、従来技術ではそれらの両立が困難であり、PET検出器内で放射線を検出した位置を3次元的に求められる3次元放射線位置検出(depth-of-interaction:DOI)の技術により初めて可能となった。 開発されているDOI検出器のほとんどは、検出器のシンチレーション結晶部分を多数の小型結晶の3次元配列で構成し、発光した結晶素子の位置を放射線検出位置としている。その際、受光素子に対し深さ方向(DOI方向)の分割が細かいほど感度と解像度を向上させることができるが、結晶の識別は困難になる。そのため、世界の他のグループでは2分割、もしくは3分割の識別となっている。我々のグループでは、今までに8分割のDOI識別に成功した。しかし、その識別法は2種類のシンチレーション結晶を用いることが必要であり、使用できる結晶の組み合わせに制限があった。本研究では、どのようなシンチレーション結晶にも対応できるよう単一結晶でのDOI方向8層分の識別を試みた。そして、今までの開発で用いた、結晶配列内の反射材挿入個所を工夫しシンチレーション光を制御する方法に、通常四角柱である結晶素子の形状を三角柱とする新しい発想を加えて8層のDOI識別を試みた。 直交する2辺が3mmの直角三角形を断面に持ち高さが3mmのLGSO(日立化成工業)結晶素子を用いて8層DOI検出器を試作し、基礎特性の測定や結晶間物質の最適化を行った結果、8層分の結晶識別が可能であることを示すことができた。その成果を、国際学会でプレミアムポスターとして発表した。
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